わさビの鑑賞記録

つらつらと。

フタリノセカイ 感想

 

監督:飯塚花笑

キャスト:坂東龍汰

     片山友希

あらすじ

  • 出会った時から違いに惹かれあった、トランスジェンダーの真也とユイ。恋愛し、いずれ結婚して家族を作り、共に人生を歩んでいきたいという願い。だが、その願いを叶えるには、一つ一つクリアしないとならない現実があった。時にすれ違い、別々の道を歩むが再び出会ったフタリ。愛を確かめ合い、ある決断をする。
    それはもしかすると常識を超えているのかもしれないだが、安らぎに満ちた二人には、確かに感じる未来があった。

 

 

「好きだから」一緒にいたし、「好きだから」子どもが欲しいという戯事が戯事ではなくなったし、「好きだから」結婚したいと心から思ったユイと。「好きだから」結婚したくてたまらないと思っていたし、「好きだから」自分が女であることを言い出せずにいたシン。どちらも悪くなくて、どちらも正しいと感じた。

 だからこそ、真実を知ったときにユイは戸惑ったし、シンは「結婚したい」としか言えなかった。ユイがシンに対して乱暴的な態度を取っていたのは、怒っていたのではなくて、どうすればいいのかわからなかったからだと思う。ずっと異性だと思っていた人が、本当は同性で、性転換手術を受けるかもしれないと告白があった。

 これからどのように接すればいいのかも、これから自分と相手がどのようになっていくのかも想像なんてできないし、想像すらしていなかったと思う。それでも受け入れようとたくさんもがいて苦しんだユイはとても美しいと思ったし、だからシンはユイに惹かれたんだとすら思う。

 

 シンと別れたユイは、別の人と結婚するけど全く笑わないユイを見ていると心がギュンとした。「好き」だけじゃどうにもならないよ、とよくいうけれど、「好き」だけでどうにでもなる。

 

「好き」が存在しない関係性はなんと呼ぶんだろうか。

 

 ユイはあの時、旦那さんを本当に好きだったんだろうか。子どもがなかなかできなくて病院に通っていたんだと思うけれど、お医者さんがアドバイスしているのを聞いているのか聞いていないのか分からなかったし、本当は二人の子どもなんて欲しくなかったんじゃないかなと思う。そこでユイは「子どもがほしい」のではなく、「シンとの子どもが欲しい」ことに気づいたのかなとも思う。

 

 シンから連絡先を渡されて簡単によりを戻した二人を見ていると、本当はどこかでどちらかが迎えに来てくれるんじゃないかと、心の中では思っていたのかもしれない。二人でいる時の二人がとても自然で、違和感なんてなくて、逆に不自然に感じた。「好き」だけでそんなにも二人が生きているように見えるのは「好きだから」こそなんだろうな。

 

 よりを戻したユイとシンが二人の将来を考えた時、やっぱり子どもが欲しいと願うわけだけど。それでも二人の間に子どもができることなんて絶対にないのは分かっていた二人が出した答え。「シュンペイとの子どもを作る。」なの、とてもすごいなと思ったし、本当に愛しているのだなと思った。

 血がつながっていなくても「二人をつなぐ宝物」がほしいと思ったんだろうし、まあそんな簡単な言葉では表してはいけないのだろうけど。その決断をした二人も素敵だし、受け入れたシュンペイも本当に素敵な人だなと思った。泣きながら「私でいいの?』って投げかけるシュンペイは「愛されることなんかない」と悟っていた時からずっと、本当は「愛」の形が欲しかったんだと感じた。

 

  「誰からも愛されない」と笑顔でいったシュンペイ。本当は、誰かと一緒に生きてみたいと思っていたんだと思うし。その二人の愛を信じたシュンペイは、シュンペイにとって最大級の「愛」の形なんだと思う。

 結局、シュンペイとユイの間の子どもは生まれることなかったけど、それでも「やっぱり、二人にとっての子どもがほしい。」と願う二人にとても感動した。「愛の形」を知るのに、「感動」という言葉があっているのかはわからないけれど、心の底から素敵だと思ったし、私にもいつかそんな相手ができるのかな、と考え込んでしまった。

 

 シュンペイとユイが性行為をして子どもを作ることに対して「気持ち悪い」「非常識」「ありえない」などという人がいるのであれば暴動を起こしてしまいそうです。

 

 「幸せ」と感じる相手が同じなのに、「指向が違うから」と言って投げ出すにはあまりにも空虚だ。になったし、